この審議会で行われた議論をここに紹介する紙面の余裕はないが、上記のテーマがまさに長い年月にわたるピル解禁の是非をめぐっての厚生省公衆衛生審議会での論議そのものであったのである。多方面の専門家をメンバーに揃えたその委員会では、多面的な検討、論議の末、特に山崎修道委員長の厳しい付帯事項をつけて、ピル解禁を可とした。
女性の性の健康を守るために避妊用ピルの有用性は認めるが、現在大流行し、恐れられているエイズ感染流行への関連性も強い性感染症予防の必要性を、より深刻に認識すべしと強調された付帯事項である。ややもすれば避妊に重点をおく社会的傾向の中で、ピル解禁の性感染症流行増進効果への危惧感を公的に明確に表明し、性感染症への問題意識を喚起している。十数年前までの無防備の性交渉には"妊娠あり"と呼んだ時代から、今や"妊娠の前に無症候性のエイズを含めた性感染症があるという時代"へと、大きく転換していることへの警句であるといってよい。
ところが、一部の思春期性教育の指導者や関係医師方の中に、未だに避妊問題さえ強調すれば思春期の性教育は事足れりとする人々が余りにも多い。このことは誠に残念でならないし、時代の推移に対する認識の遅れといわざるを得ない。
無症候性性感染症/エイズの流行する前の時代には、確かに避妊のみで事足りたが、新しい時の流れとして"性の陰"の内容が大きく変貌してきている。関係者は、このことを真剣に考える必要がある。そこで、わが性の健康医学財団としては、旧態依然たる性問題意識を持つ人へ正しい情報提供をするとともに、公衆衛生審議会付帯決議の普及・実践のために、その警告を発した委員の一人として筆者も、その社会的認識の誤りをいかに是正するかに心を痛めながら、現在、財団の社会啓発活動を続けてきているのである。
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