その他の性感染症
淋菌感染症
かつて性病の代表のようであった淋菌感染症も、
ペニシリンなどの抗生物質普及のおかげで、昔から
みると大分感染例が減りはしました。
しかし、男性の淋菌性尿道炎としての淋菌感染症は、
今もまだ残っていて、かなりのひろがりをみせていま
す。症状としては、尿道から黄色膿汁が出て、強い
排尿痛があるのが特徴です。
一方、女性の淋菌性子宮頸管炎も、通常は膿性の
帯下(おりもの)がでるとされています。しかし、
最近は、むしろクラミジア感染と同じように、殆ど
症状がない感染例がかなり増えています。放置する
と、クラミジア以上に、骨盤内感染症に発展し、不
妊症になってしまいます。もう一つの問題点は、そ
のような無症状の感染女性からうつされた淋菌でも、
男性が感染すると、激しい尿道炎を発生させること
が注目されるところです。
この淋菌感染症は、昔に較べ最近は症状が軽くな
ってきたとはいえ、やはり男性では、尿道の炎症は
尿がしみて、痛みなどの症状がでやすく、比較的早
く診療を受ける人が多いので、公衆衛生学上、また、
医学的にも管理しやすい感染症となっています。
世界中の多くの国々では、コンドーム使用キャン
ペーンの普及や性感染症/エイズ予防意識の向上に
より、予防や治療対策が徹底してきており、殆どの
先進国では、淋菌感染例が最近急激に減って来てい
ます。この淋菌感染症流行の動向が、その国の性感
染症/エイズ予防意識がどの程度か示す、一番よい
指標とさえ考えられています。
ところが、日本では驚くことに最近、男子の淋菌感染症が増加の一途をたどっ
ているのです。これは、前にもクラミジア感染症のところで述べたように、最近、エイズはもう
性感染症としてあまり心配しなくていいというよう
な、社会的風潮がひろがったため、性感染症に対す
る警戒心や予防意識がかなり低くなっていることに
よるといえましょう。この淋菌感染症の増加現象は、
きわめて感染の可能性の高いフーゾク街でも、コン
ドームをつけない、無防備の性交渉をする人が増え
続けている風潮を反映している現象なのです。
しかし、それだけでなく、性の自由を楽しんでい
る若い普通の女性にも、無症候感染をしている人が
いるため、どんな場合でも、コンドームをつけない
でいると感染してしまう可能性のあることを忘れな
いでください。
この淋菌感染症さえも増えているというデータは、
いかに社会全体が、エイズを始めとする性感染症に
対する恐怖感・危機感がなくなっているかを示して
いるといえましょう。最も管理しやすい淋菌感染症で
さえ、日本のように増えているのは、感染症学の常
識からすれば、近い将来、エイズ大流行をおこす可
能性が高いのではと、前述したように外国の研究者
に盛んにいわれています。きわめて憂慮すべき風潮
ではないでしょうか? 日本は、今、大きな問題を
抱えていると言えます。
梅毒
梅毒はコロンブスがアメリカからヨーロッパヘも
たらし、かつては世界的に大流行し、性病の代表と
されていた性感染症です。しかし、そのさしもの梅
毒流行も、ペニシリン出現後は影をひそめるように
なって来ました。現在では、一部ではいまだに残っ
ているものの、我が国の全性感染症のうち、0.8%程
度に少なくなっています。ただごく最近、ペニシリ
ンが他の性感染症治療に使われなくなってきたこと
の結果として、他の感染症と一緒に感染している梅
毒が、他の感染症の治療後も残ることがあり、徐々
にまた増えているとされています。そのため、最近
また、注目を要する性感染症となってきているとい
えます。感染後2、3週間で局部に小さな硬結ができ、
それらが崩れて潰瘍となるのが特徴です。そして、2
〜3ヶ月後に特徴的な全身に梅毒疹ができます。
最近は、あまり局所に症状が出ないで感染してい
る場合もありますので、そのような所見がなくても、
梅毒血清反応で16倍以上の陽性であれば、無症候性
梅毒として治療しなければなりません。既婚の妊婦
での検査では、約0.2%(500人に1人)が梅毒検査
で陽性になっています。
性器へルペス
女性に多い性感染症は、性器クラミジア感染症ば
かりでなく、ウイルス性の性感染症である“性器ヘ
ルペス”もその傾向が強いのです。報告症例数はク
ラミジアの約3割程度ですが、やはり男女比は1:2.4
と、断然女性が多くなっています。女性に多いのは、
感染しにくい皮膚で覆われている男性の場合より、
女性では外性器や子宮頸部は、表面が感染しやすい
粘膜でおおわれているためと考えられます。
この性器ヘルペスが問題なのは、局所にはっきり
した病変がない時でも、性器からウイルスを排出し
ていて、パートナーにうつす可能性があることです。
特に女性の場合、性器が奥まっているために、小さ
な病変が見落とされやすいことも多く、また、腟の奥
にある子宮頚部の病変は、まったく気付かれないわ
けで、パートナーにうつす可能性もかなり高いので
す。
症状が出る場合の性器ヘルペスの症状は、性器に
小さな水疱が出て、それが破れると潰瘍が多発し、
それが2週間ほどつづき、消えます。ことに女性の
場合、腟前庭に潰瘍ができると尿が滲みて、排尿時
の苦痛に悩まされます。
この性器へルペスで厄介なことは、再発すること
がかなり多いことです。感染した患者にとっては深
刻な問題をはらんだ感染症といえます。
尖圭コンジローマ(ヒト乳頭腫ウイルス感染)
良性型のヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による感染
で、性器に乳頭状の小腫瘍(できもの)が発生しま
す。手や足の“イボ”も同じ種類のウイルスで起き
るのですが、性器につきやすい型のウイルスがあるわ
けです。出てきた“できもの”は、通常それを切除や
焼灼して取るので、感染したウイルスが根の所に深
く残り、再発を繰り返すようになり、治療の難しい
病気となることも少なくなくありません。やはり、
かなり注意しなければならない感染症です。
一方、このウイルスの中には悪性型もあり、それ
が陰茎癌や子宮頸癌を発生させたり、時には口腔癌、
咽喉癌の発生につながることもあるので、最近注目
されている感染症です。
しかも、この悪性型ヒト乳頭腫ウイルスの感染流
行が、若い人々の間へのひろがりを大きくみせはじ
め、その結果として、最近、子宮頸癌の発生が、か
なり若年化を起こしているとされています。そのため、
子宮頸癌検診も今までの30歳からというのではなく、
もう少し若い20歳代の人々から始めるべきであると
考えられるようになってきてます。
腟トリコモナス症
腟トリコモナスによる感染は、女性では無症状の
場合もありますが、半数以上は、薄い膿性のおりも
のや外性器のかゆみが出るような、腟炎を起こしま
す。そして、性交痛や膀胱炎様の痛みが出ることも
時々あり、不快な性感染症の一つです。
男性も無症状のものから、軽い非淋菌性尿道炎症
状がでるものまで、いろいろですが、女性より感染
例はあまり多くないようです。
ケジラミ症
ケジラミの寄生により、陰部にかゆみがでるのが
特徴です。時にはケジラミに刺された所が点状に紅
くなることで気づくこともあります。陰毛に附いて
いる虫卵か、またはケジラミそのものを検出するこ
とで診断がつきます。
これも最近少なくなっているとはいえ、なかなか
なくならないのは、やはり性にまつわる病気の宿命
なのでしょうか。

(財)性の健康医学財団