ところで最近の中・高校生男女の性生活が活発であることから、その年齢における詳細なクラミジア感染率にも、医学的関心が高くなって来ている。そこで、我々の全数疫学調査での10歳台のデータを1歳刻みで検討してみたのが、
図5 である。
これは前述したように有症感染例のみの集計成績ではあるが、高校1年から3年にかけて感染率が急激に上昇しており、18〜19歳の大学生になると、20歳前半の成人感染率同等の高さにまで達している。やはり高校生の活発化した性生活を反映して、高校時代に感染率が上昇している。しかも女子が男子に比して著しく高い感染率で、1歳上がる毎の急上昇は注目に値する。
ただ、このデータも前述したようにその裏にかなりな無症候感染例がいるはずである。しかし、この年代の生徒・学生の一般人口内でのクラミジア感染率を大々的に調査することは必ずしも容易ではない。あまり多い検討症例ではないが、一応我々が調査し得た所をまとめると、
表1 の如くになる。
| 表1 |
一般人口内高校・大学・専門学校生におけるクラミジア陽性率(尿検査)〔熊本・今井他5)〕 |
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全体 |
(性経験あり) |
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高校3年男子 |
2%(195名) |
− |
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大学・専門学校生男子 |
5.1%(392名) |
7.2% |
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大学・専門学校生女子 |
6.9%(592名) |
9.3%
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図5 に示した我々の有症状症例での全数疫学調査での女子大学生のクラミジア罹患率は1.4%となっている。しかし先の妊婦データや看護学生のデータ同様、無症候感染を勘案して実数を推定すべく5倍すると7%となる。ところが、
表1 の女子大学・専門学校生陽性率が丁度6.9%となっていて、まさに推定通りとなっている。
ただ、男子では無症候性感染を含めても有症症例のわずか2倍という国際的な推定基準により計算すると、無症候性も含めた感染率はかなり少なく、高校3年は0.6%、大学・専門学校生は1%となるはずである。ところが我々の調査データでは、それぞれ2%、5.1%となっており、男性においても無症候性感染が非常に多いという注目すべき所見が出ている。これは男性の無症候感染が感染例のわずか半数という、国際的推定が誤りである可能性が高いことを示している。
それを示唆するように我々が行なっている既婚妊婦調査で、妻達の平均感染率が5%であるのに対して、夫側が3%という陽性率が出ている。この所見も、男子の無症候感染例が、やはりかなり潜在しているはずであるという知見になっている。今後是非とも、一般市民内における男性群のクラミジア感染率をより積極的に調査する必要があると言える。単なる推定であるが、男性も同年齢女性の2/3程度の感染例が、無症候感染率を含めて存在するのではと私考している。今後の調査に強く期待しているところである。
ただ、そのような一般人口内における感染率を一括して論ずることとは別に、男女ともセックス・パートナー数が多くなると、それに比例して感染率も高くなるという事実も忘れてはならない。その点につき、大学・専門学校生を対象に調査したところをまとめると、
表2 の如くになる。
| 表2 | 大学・専門学校生におけるセックス・パートナー数とクラミジア陽性率〔今井・熊本5)〕 |
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セックス・パートナー数 |
男性陽性率 |
女性陽性率 |
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0人 |
0% |
0% |
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1人 |
2.5%(1/40人) |
3.2%(1/31.3人) |
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2人 |
6.7%(1/15人) |
5.6%(1/18人)
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3人 |
6.9%(1/14.5人) |
8.7%(1/11.5人)
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4人以上 |
15.1%(1/6.6人) |
14.8%(1/6.8人)
|
セックス・パートナーが多くなるにつれ感染率は上昇し、4人以上ともなると、男女とも極めて高率になる。このデータからすると、感染率調査をする対象群がどのような性生活活性度を持つ人々の集団であるかで、感染率が大きく変わることになる。年齢分布よりもセックス・パートナー数の分布の方がその集団の感染率の鍵を握る可能性があると言えよう。
ちなみに、参考のため
表2 の調査学生の性経験パートナー数分布をみると、
表3 のようになっている。
| 表3 |
大学・専門学校生における経験セックス・パートナー数分布 〔今井・熊本5)〕 |
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セックス・パートナー数 |
男性 |
女性 |
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0人 |
28.8% |
25.8% |
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1人 |
20.2% |
21.3% |
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2人 |
11.5% |
12.0%
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|
3人 |
7.4% |
7.8%
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4人以上 |
32.1% |
33.1%
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このように高校から大学生までの若い人々が、自由・活発な性生活を享受している間に、ひそかに無症候性のクラミジア感染が彼らの中に大きく拡がってしまっているのである。
殊に、性生活の活発な女子達の感染率はかなり同年齢女性平均より高くなっている。例えば、高校の保健室に性問題で相談に来た女子生徒の感染率は18%(1/5.5人)であったし、未婚10歳台後半で望まざる妊娠の人工妊娠中絶を施行した女性などは感染率が24%(1/4.2人)にも昇っていた。