| ■他の性感染症感染例はエイズにかなり感染し易い
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アジアのエイズ流行の現状はかなり厳しいものがあり、中国ではすでにHIV感染例が100万人、10年後には1,000〜2,000万人にも達するであろうとされている。それが徐々にわが国にひそかに入り込む可能性が専門家の間で強く危惧されている。現在、タイを中心に拡がる性感染症タイプのHIVウイルス01型が、東南アジア、さらに中国海岸部を這うようにして徐々に日本に侵入しつつあることは注目すべきことである。
ところで、わが国にどれ程エイズ/HIV感染例がいるのかということになる。WHOでは10万人に1人位という予想をしており、エイズ疫学研究班の予想では全体で2万人前後、一部の専門家は5万人強などと、それぞれ推定を出しているが、わが国での正確な調査はなく、今後の公衆衛生上の大きな課題となっている。とにかく、あまり多くないから自分には関係ないと人々に思われていることは間違いない事実である。
とはいえ、最近若い人々を中心に性感染症としてのエイズ/HIV感染例数が急カーブに上昇傾向を見せていることは注目されるところである。ことに、中国を始めとする極めて近隣の東アジア諸国でとみに感染例急増傾向があることを考えると、それらの国々との交流の盛んなわが国に、エイズ/HIV感染の大波が押し寄せてくる可能性は極めて高いと言える。
ところが、最近人権問題が下火になって来たことを反映して、エイズへの社会的関心が極度に低下している、ジャーナリズムもあまり取り上げなくなり、一般の人々の間でも、話題にもあまりならない。エイズは心配でなくなったかの如く感じられている。まさに日本特有の平和呆け的現象が、残念ながらエイズ問題にも起きているのである。
さらに、一般の人々はエイズ・ウイルスは性交渉でうつるとしても、そう簡単に伝染しないのではないかと信じている。麻薬の注射の回し打ちとは違い、それ程心配しなくてもよいのではと、かなり甘く考えている。しかし、図1 のように、看護婦がエイズ患者に注射をした際、誤ってその針を自分の手に刺してしまった“針刺し事故”が起きた時などは、それこそ大騒ぎして、検査、予防と対応におおわらわになる。ところが、そのエイズ患者との無防備の性交渉による感染伝達率も、実はその針刺し事故とほぼ同率程度に高く、かなり無防備の性交渉が危険であるという国際的に有名な報告のあることはあまり知られていない。まさに知らぬが仏である。
症状のないHIV感染例でも粘液・腟分泌液中にエイズ・ウイルスが排出されており、上述のようなことは当然おきることなのに、一般の人々は警戒心が殆どない。そして感染させられてから相手を調べても、うつした本人も自分が感染しているのを知らなかったという話も少なくない。無症状のうちにうつし、うつされているのである。
その上、後述するが、クラミジア、淋菌、またヘルペスなどの従来の性感染症に罹患していると、性器局所が感染の炎症で荒れていて、通常の5倍はエイズ・ウイルスにより感染し易くなっている。そのためにも他の性感染症の予防が如何に大事かが解る。
しかも、そのような他の性感染症に罹患しているということは、コンドームを使用せず性交渉を通常行っていることを証明している訳である。そのような無防備のセックス実行者は、当然エイズ/HIVにもまた無防備なわけで、極めて危険な性生活をしているということになる。わが国のそのような危機感のない一般の人々の性生活の中に、無症候のエイズ/HIV感染がひそかに浸透しつつあることを忘れないで欲しい。
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図1 HIV(エイズウイルス)の伝染確率 (Royce, et al: N Engl J Med, 336:1072, 1997)
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