地域保健に携わる看護職の方へ

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地域保健に携わり、性の健康に向き合っておられる医療職の方々へ

地域住民の性感染症に対する認識は様々で、性感染症の知識がない状態で感染し、無症状で感染を拡大している現状があります。地域住民を対象として、性の健康に関する教育を企画し、積極的に啓蒙活動を進めていく必要があります。

特にわが国ではHIV/AIDSの新感染者や患者は増加傾向が続いており、性行動を開始したらSTIの検査をするという認識を広めて頂きたいと思います。また、HIVは不治の病でしたが、治療法が進歩しており、早期に発見されることで、AIDSに移行することが防げます。無症状で経過し、発病して感染がわかるいわゆる 「いきなりAIDS」 患者が少なくなるように、特に保健センターでは無料で匿名での検査が出来ることを広く認識できるようなメッセージを出していただきたいと思います。
HIVの減少に寄与することは、地域の医療職の役割だと思います。

地域住民の性の健康に向き合う ~支援のポイント

1地域住民に対する性の健康教育の実施

地域住民に対して、性感染症や妊娠、出産、避妊などに関する健康教育を開催します。出来れば対象の背景などを考慮して、若い女性対象や、更年期の女性、働いている中年男性など、焦点を絞ると内容も集約でき、企画しやすくなります。

2検査に来られた方への個別教育

検査における守秘義務を守ることが最も大切です。結果に基づいて個別に指導することになりますが、性感染症に罹患していたとしても、相手を蔑む態度や、差別する姿勢は見せないように対応します。陽性の場合は、パートナーに対する検査の必要性についても触れましょう。

3HIVに対する匿名無料検査の推進

HIVの検査は匿名で、かつ無料で出来ますが、知らない人もいます。 機会をみて検査の勧奨をすることも必要です。HIVの感染者は増加傾向が続いていることを知らせ、検査の必要性と死亡する病気ではなくなったことなども伝えたいものです。

4性感染症に関する知識の提供

性感染症に関する知識の提供は、感染防止教育として大事です。学校や地域で機会あるごとに伝えていきたいものです。パンフレットやリーフレットを作成し、地域の医療機関に配布して自由に患者教育に使用していただくのもよいのではないでしょうか。

5学校や職場における出前講座の企画

保健センターの保健師のみでなく、地域の専門職を活用して、出前講座を企画しましょう。専門職からの話は、聞く人に納得させるものを持っています。

よくあるQ&A

Q1性感染症はセックス以外でもうつるのですか?

A1本来、「性病」として認識された病気は、起因菌が宿主である人体を離れるとすぐに感染性を失うので、飛沫や器物を介する感染が起こらず、「感染部位である性器と性器との接触によらなければ伝染しない病気」です。タオル等器物を介する伝染は、トリコモナス、疥癬を除けば、きわめて例外的です。
淋菌、クラミジアは、性器と同質の上皮がある咽頭、直腸にも感染するため、フェラチオの一般化に伴って、咽頭の感染が問題となっています。また、HIVの流行疫学から、アナルセックスではHIV、B型肝炎など血液由来ウイルスの伝達効率が、他のセックスに比べてきわめて高いことがわかりました。また、ヘルペスは、口唇や性器周辺に感染しやすいため、キスによる感染もありえます。

Q2HIVの即日検査は信頼していいですか?

A21時間以内に結果が出るHIVの即日検査が一部の保健所で実施されています。HIVの抗体検査は、最新の技術が応用され、正確性は他の性感染症を大きく上回っていますので、信頼できるものです。しかしながら、「陽性を陰性と誤る偽陰性」はありませんが、「陰性を陽性と誤る偽陽性」は約1%生じます。この場合、真の陽性の確認検査の結果までに1週間以上かかり、その間の検査を受けた者の心理的負担は非常に大きいので、検査を行う側は検査前に偽陽性の存在についての説明が必須です。

Q3私だけクラミジアの検査結果が陽性で、パートナーが陰性ですが、
この結果は本当に正しいですか?

A3男性は排尿痛等症状を自覚して受診しますが、単なる尿道炎として治療され、パートナーの治療が行われなかったことが考えられます。病院で診断した感染者のパートナーの受診をすすめた場合、そのクラミジア陽性率は、男性感染者の同伴女性パートナーでは約60%であるのに対し、女性感染者の同伴男性パートナーでは20%以下です。排尿痛等症状が自覚しやすい男性には治療機会があるのに対して、症状のない女性には治療機会がきわめて少ないことが理由です。

Q4HIVの検査にきた男性が陽性でした。パートナーの検査を勧めたのですが、陽性であることは伝えづらく、彼女とはここ2カ月以上性交していないので、このままセックスしなければ感染しないのではないかというのですが・・・。

A4HIVの場合感染してから3カ月以上しないと結果に出ないので、今回陽性であることは、3月以上前に感染していたことを意味します。

各種養成制度・開催講座・配布資料等のご案内

当財団では、医療機関に携わる看護職の皆様に向けて、以下のような養成制度や講座を設けています。
その他詳しくは、事業案内 のコンテンツ内にてご覧ください。

医療職(臨床医)向け各種医療職向け教職向け

臨床現場を対象とし、性感染症をはじめとする感染症の検査・診断・治療とその予防方策について最新の知見等を提供する専門的な講習を目的としています。
本年度は、医師講座と性の健康基礎講座をあわせて実施することとなりました。
※日本性感染症学会教育研修単位の講座です。

テーマ 『感染症と差別・偏見』
第15回 : 2024年3月17日(日)
詳しくはこちら

性の健康カウンセラー 養成制度
各種医療職向け教職向け

人間にとって性とは何か、さらに将来を見据えた性の健康とは何かを探り、即戦力となる性の健康に関する不安や悩みの相談に特化したアドバイザーを養成しスキルアップを図ることを目的としています。
性の歴史をひもとき、大きく変わりつつあるわが国の性の現状と対応を学ぶことから始めます。

2023年度は、これまでの性の健康カウンセラーコースの内容を吟味して、一部を対面開催とし、残りの多くを受講生の都合に合わせて視聴できるように、オンデマンド開催といたします。基礎コース応用コース共に受講して頂き、全ての受講を終えた後に「性の健康カウンセラー」として認定いたします。

対面での開催
・基礎コース 1月28日(日曜日) ZOOM
・応用コース 2月18日(日曜日) カウンセリングの実際 他
       3月10日(日曜日) 認定試験・修了式を含む
対面講義会場:東京大学泌尿器科医局(CRC棟 3F 北)

オンデマンド視聴
・基礎コース 期間:1月10日~2月10日
・応用コース 期間:2月10日~3月7日
・すべて終了しましたら、認定証を授与致します。 詳しくはこちら

中高生・保護者向け
出前講座

あるちょっとしたきっかけから始まった 「性感染症出前講座」。
当財団では、ご要望のあった学校(高等学校など)に直接出向き、生徒さんや保護者向けに、無料で性感染症予防講座を開催しています。

「あちらもまなび、こちらもまなぶ」
生徒さん達に直接語りかけながら、現代の若者の性感染症予防に対する意識やニーズを読み取り、今後の財団活動にフィードバックするための活動でもあります。

性の健康と相談のためのガイドブック

性の健康に関する啓発活動に従事する保健医療従事者、学校保健関係者、必携!

性に関する考え方や性感染症、避妊、人工妊娠中絶などの基本的な知識を、事例やQ&Aを盛り込んでわかりやすく解説しています。
性の悩み相談に活かせる知識が満載。 「性の健康」を支援するすべての人が、幅広い視野をもち、相談者として自信をもって対応することができる実践書です。

編集 (公財)性の健康医学財団 / 編集代表 齋藤益子  2014年4月10日発行
B5判198ページ  定価 2,860円 (本体2,600円+税10%)
発行所 中央法規出版株式会社
詳しくはこちら

臨床医・研究医向け各種医療職向け
性の健康に関する調査研究の助成

性感染症をはじめ、性の健康を損なう諸要因を医学的、社会学的、心理学的等の学際領域から究明し、性に関する医学技術の発展を図るための調査研究および助成です。
公募していますので、ご希望の方は随時ご相談ください。

女性性器からのHPV自己採取検体郵送検査による全国調査
子宮頸がんの早期発見、早期治療に役立ちます。詳しくはこちら
先着500名様を対象といたします。

性の健康活動資金助成事業
性感染症の認知、啓発活動および性の健康を増進することに
関しての活動を推進するための活動資金です。詳しくはこちら
平成29年度 応募期間: 9月8日~10月10日
※応募期間延長 2018年1月4日(必着)まで ※終了

臨床医・研究医向け各種医療職向け
性の健康医学財団賞

性感染症および性の健康に関して、科学的研究の発展を図るために
性感染症および性の健康に関して、その成因、病態、診断、治療、予防・啓発等の科学的研究の発展を図るため、当財団の創立90周年を記念して設けられた賞です。
※泌尿器科分野・産婦人科分野・性の健康分野の3分野
※自薦・他薦は問いません

本年度 応募ならびに推薦期間 : 令和4年9月2日(金)※終了 詳しくはこちら

各種医療職向け教職向け

日常業務に役立つ、性感染症の予防をはじめとする性の健康についての知識を習得していただく講座です。
本年度は、医師講座と性の健康基礎講座をあわせて実施することとなりました。
※日本性感染症学会教育研修単位の講座です。

テーマ 『HIVと性感染症-予防と治療の最新情報』
第13回 : 2022年3月6日(日) ※終了 詳しくはこちら

保健師向け

地域住民の基本的な健康問題の一つである、性感染症防止対策の担当である保健師のための研修を行い、性感染症予防対策の強化を図ることを目的といたします。

本年度 ※終了: 2016年1月13日(水)詳しくはこちら

性の健康について、さらに詳しく知りたい方へ

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは、「性的接触によって感染する病気」 と定義されます。 普通の性器の接触による性交だけではなくオーラルセックスやアナルセックスなど性的な接触で感染するすべてが含まれます。したがって特殊な状況での感染もありますが、通常の人としての営みの中で誰もが感染する病気であり、誰にでも生じる健康問題であるといえます。

以下コンテンツでは、代表的な性感染症を体系的に情報提供します。また、平成30年1月18日改正の「性感染症に関する特定感染症予防指針」において特に指摘されている若年層における性感染症発生の割合が高いことや、梅毒報告数の増加等の情報を提供しています。
ぜひ日常業務の中で、地域住民の方々に対する性感染症の予防啓発にお役立ていただければ嬉しく思います。

性の健康について

性の健康について

「性の健康」とは、単に疾病がない状態を意味するに留まりません。性の喜びや満足は幸福にとって不可欠な要素です。

性の健康世界学会(World Association for Sexual Health :WAS)で採択された 「性の健康と性の権利宣言」 を紹介し、これらを踏まえながら、各機関の専門職の方々におさえていただきたい、具体的な支援のポイントをお伝えいたします。

性感染症とは
~予防啓発に役立つ情報 (もくじ)

1. 性感染症とは

  • ● 感染症法の中で規定されているもの
  • ● 特定予防指針で示されているもの
  • ● 学会ガイドラインであげているもの

2. 主な性感染症一覧

  • ● 梅毒
  • ● 淋菌感染症
  • ● 性器クラミジア感染症
  • ● 性器ヘルペス
  • ● 尖圭コンジローマ
  • ● 腟トリコモナス症
  • ● ケジラミ症
  • ● 性器カンジダ症
  • ● B型肝炎
  • ● C型肝炎
  • ● 後天性免疫不全症候群(エイズ)

3. 性感染症の現状

  • ● 疾患別報告数(定点・2020年)
  • ● 定点あたり年次推移(2000~2020年)
  • ● 定点あたり年齢階級別(2020年)
  • ● 梅毒の動向(梅毒が増えています)

4. 性感染症の検査・治療

  • ● 保健所に行く
  • ● 病院・クリニックに行く
  • ● 検査と診察の実際

5. 若者の性行動の実態と避妊

  • ● 若者の性行動の実態
  • ● 高校生の妊娠と避妊
  • ● 避妊法