医療機関に携わる看護職の方

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医療機関に携わり、性の健康に向き合っておられる看護職の方々へ

今や性感染症は生活習慣病的に捉える必要があり、性生活のある者は誰でも感染する可能性のある疾患です。しかし、性器に関する病気は、羞恥心から病院を受診するのが遅れがちになります。受診するのに思い悩み、やっとのことで決心して、病院の門をたたいていることが多いものです。

そこでの看護師の一言は大変重要な意味をもちます。性行動に対する問診でも、かけることばや表情により、時には患者が深く傷つくことがあります。性感染症を特殊な疾患として捉えるのではなく、他の様々な感染症と同様に捉えて、対応する必要があります。

また、性感染症はパートナーの治療も必要になりますが、感染に係る不用意なことばが二人の関係性を壊すことにも繋がり、パートナーの受診行動にも影響してきます。それらを理解して、性の健康を守る立場として、温かく支援したいものです。

患者の性の健康に向き合う ~支援のポイント

1既往歴や現状の正確な問診

プライベートな空間で問診票を見ながら、患者と一緒に既往歴、現状を確認してみてください。先入観で患者の病歴を判断しては、信頼関係を築くことは難しいはずです。身体的なことだけなく、心に秘めたことにも関わることで、性感染症の拡大を予防することにつながります。

2医師への情報提供

問診や処置など、患者との接触で得た情報は、治療や感染予防に大きな意味を持つことがあります。些細なことでも絶えず医師と共有する姿勢をもちましょう。情報は確実に、状況を加味して責任を持って伝えましょう。

3患者への感染予防教育

すでに、なんらかの症状があって治療を受けている患者に対して、再び性感染症にかからないように関わる必要があります。問診から得た情報をもとに、患者一人ひとりに合わせた予防教育をしていく必要があります。

4確実な治療へのアドバイス

症状が軽減あるいは消失すると、患者はどうしても治療を継続する行動がとりにくくなります。確実に治療が行われないと常に「感染源」になりうる可能性があることを説明して、大切なパートナーを守ることに繋がるという点を、理解してもらう必要があります。

5途中での治療放棄の防止

前述のように、症状が軽減あるいは消失すると、患者はどうしても治療を継続する行動がとりにくくなります。途中で治療を放棄することは、治療薬に対する耐性菌を作ることにも繋がります。自分のことだけでなく、治療に対する社会的責任についても説明しましょう。

よくあるQ&A

Q1セックスしてはいけませんか?

A1性感染症の最も確実な「予防法」は「セックスをしないこと」です。しかし、「セックスをしてはいけない」ということではありません。パートナーが異性でも同性でも、「安定した1対1の関係」を保つようにし、性感染症のことや予防法についてお互いに認識できるようにしましょう。
セックスの相手がお互いにひとりで、性感染症に感染していないことがわかっていれば、もちろん絶対に安全ですが、相手が性感染症に感染しているかどうかわからない場合には、感染の可能性があります。見知らぬ相手や行きずりの相手とのセックスは、感染の可能性が増します。

Q2風俗店ではよく感染するのですか?

A2性感染症のリスクは「コンドームを使わない無防備のセックスをしたパートナーの数」および「そのパートナーのそれぞれが、それまでに経験したパートナーの数」に依存します。風俗店の従業員は、当然経験したパートナー数が多い人たちと考えられ、その人たちとのセックスが無防備であれば、1回のセックスによる感染のリスクは大きくなります。
風俗店の従業員が定期的に検査を受けるとしても、HIVや梅毒など抗体検出までの期間の問題など検査のタイミングもあり、すべての性感染症についての正確な検査は不可能です。
女性で症状のほとんど出ない性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、とくに咽頭の淋菌感染症などは、風俗店でも広まっています。

Q3私だけクラミジアの検査結果が陽性で、パートナーが陰性ですが、
この結果は本当に正しいですか?

A3男性は排尿痛等症状を自覚して受診しますが、単なる尿道炎として治療され、パートナーの治療が行われなかったことが考えられます。病院で診断した感染者のパートナーの受診をすすめた場合、そのクラミジア陽性率は、男性感染者の同伴女性パートナーでは約60%であるのに対し、女性感染者の同伴男性パートナーでは20%以下です。排尿痛等症状が自覚しやすい男性には治療機会があるのに対して、症状のない女性には治療機会がきわめて少ないことが理由です。

Q4パートナーに感染していることを話さなければなりませんか?

A4自分だけ治療してもパートナーが感染していれば、ピンポンのようにお互いに何回でも感染させあってしまいます。
性感染症に感染後に性行為があれば、パートナーも陽性となる可能性があります。必ず話をして、パートナーも検査し、適切な治療を受けてください。

Q5包茎は性感染症になりやすいですか?

A5包茎が医学的に問題になるのは、亀頭をおおう包皮をペニスの根元の方向に引き上げた場合、包皮の先端(包皮輪)が極端に狭すぎて、亀頭を圧迫による変形なしに冠状溝まで包皮の外に露出できない場合、すなわち「真性包茎」だけです。手術を要するこの状態は、日本人成人男性では1%以下です。
真性包茎ではない「仮性包茎」の成人男性はたくさんいます。仮性包茎の手術は美容目的だけで、医学的に必要は全くなく、仮性包茎が性感染症の原因となることもありません。

Q6抗菌薬が効かない淋菌がありますか?

A6かつて淋菌はペニシリンで完全に陰性化する菌でしたが、薬剤耐性となりやすく、使用開始後約20年でペニシリンは無効となりました。抗菌薬の使用量が多い日本では、ニューキノロンなど新しい抗菌薬の淋菌耐性化が世界で最も早く、2000年にはあらゆる経口薬で陰性化不可能の耐性淋菌が出現しています。3日間内服しても、症状の改善がない薬剤の継続は無意味です。
セフトリアキソン(ロセフィン)は1回の注射で咽頭を含む全身の淋菌を陰性化させることができ、理想的な単回投与療法です。

Q7クラミジアの抗体は、治療後も「陽性」で持続しますか?

A7「抗体」は、起因菌の感染があった人にだけ血液中に出現し、起因菌にのみ特異的に反応する自分自身の免疫グロブリンです。起因菌が陰性化しても、血中の抗体はすぐにはなくなりません。クラミジアの抗体価(抗体の量)は、治癒後、6か月以内に低下を始めますが、低下速度には個人差があり、治療前の抗体価が高い場合は、3年後にも陽性が持続します。
性感染症の場合、抗体には新しい感染の防御率が低く、たとえば性器クラミジア感染症に一度感染して治療し、治療後も「陽性」が持続しているからといって、クラミジアに対して完全な免疫となったわけではありません。抗体が陽性であっても、感染する機会があれば、同じ起因菌に何度でも感染します。

各種養成制度・開催講座・配布資料等のご案内

当財団では、医療機関に携わる看護職の皆様に向けて、以下のような養成制度や講座を設けています。
その他詳しくは、事業案内 のコンテンツ内にてご覧ください。

性の健康と相談のためのガイドブック

性の健康に関する啓発活動に従事する保健医療従事者、学校保健関係者、必携!

性に関する考え方や性感染症、避妊、人工妊娠中絶などの基本的な知識を、事例やQ&Aを盛り込んでわかりやすく解説しています。
性の悩み相談に活かせる知識が満載。 「性の健康」を支援するすべての人が、幅広い視野をもち、相談者として自信をもって対応することができる実践書です。

編集 (公財)性の健康医学財団 / 編集代表 齋藤益子  2014年4月10日発行
B5判198ページ  定価 2,808円 (本体2,600円+税8%) ※会員特価あり
発行所 中央法規出版株式会社
詳しくはこちら

性の健康カウンセラー 養成制度
各種医療職向け教職向け

大きく変わりつつあるわが国の性の現状を、性の歴史を深く学ぶことから始め、人間にとって性とはなにか、さらに将来を見据えた性の健康とは何かを探り、即戦力となる性の健康に関する不安や悩みの相談に特化したアドバイザーの養成、スキルアップを図ることを目的といたします。

平成28年度(第4回)※新着日程 <基礎コース> :
平成28年9月3日(土)・4日(日)、9月24日(土)・25日(日)詳しくはこちら
※基礎コース修了者は、応用コースを受講することができる

平成28年度(第3回)※新着日程 <応用コース> :
平成28年9月30日(金)・10月1日(土)、11月12日(土)・13日(日)詳しくはこちら
※基礎コースを修了した者を対象とする

各種医療職向け教職向け

テーマ 「ストップ The 梅毒!! -性感染症を予防するために私たちにできること-」
本講座は、今年で第9回となります。
日常業務に役立つ、性感染症の予防をはじめとする性の健康についての知識を習得していただく講座です。
<日本性感染症学会認定研修>

本年度(第9回) ※終了: 平成28年2月14日(日)詳しくはこちら

性の健康について、さらに詳しく知りたい方へ

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは、「性的接触によって感染する病気」 と定義されます。 普通の性器の接触による性交だけではなくオーラルセックスやアナルセックスなど性的な接触で感染するすべてが含まれます。したがって特殊な状況での感染もありますが、通常の人としての営みの中で誰もが感染する病気であり、誰にでも生じる健康問題であるといえます。

以下コンテンツでは、代表的な性感染症について体系的に理解し、平成24年(2012年)1月の 「性感染症に関する特定感染症予防指針」 改正のポイントとされる、口腔を介した性的接触による咽頭感染に関する情報の提供等も含めています。
ぜひ日常業務の中で、地域住民の方々に対する性感染症の予防啓発にお役立ていただければ嬉しく思います。

性の健康について

性の健康について

「性の健康」とは、単に疾病がない状態を意味するに留まりません。性の喜びや満足は幸福にとって不可欠な要素です。

性の健康世界学会(World Association for Sexual Health :WAS)で採択された 「性の健康と性の権利宣言」 を紹介し、これらを踏まえながら、各機関の専門職の方々におさえていただきたい、具体的な支援のポイントをお伝えいたします。

性感染症とは
~予防啓発に役立つ情報 (もくじ)

1. 性感染症とは
● 感染症法の中で規定されているもの
● 特定予防指針で示されているもの
● 学会ガイドラインであげているもの

2. 主な性感染症一覧
● 梅毒
● 淋菌感染症
● 性器クラミジア感染症
● 性器ヘルペス
● 尖圭コンジローマ
● 腟トリコモナス症
● ケジラミ症
● 性器カンジダ症
● B型肝炎
● C型肝炎
● 後天性免疫不全症候群(エイズ)

3. 性感染症の現状
● 性感染症定点での報告数(2011年)
● 定点あたり報告数の年次推移(男性)
● 定点あたり報告数の年次推移(女性)

4. 性感染症の検査・治療
● 保健所に行く
● 病院・クリニックに行く
● 検査と診察の実際

5. 若者の性行動の実態と避妊
● 若者の性行動の実態
● 高校生の妊娠と避妊
● 避妊法