医療職の方へ(1) 診療に携わる医師の方

日常の診療業務で、性の健康に向き合っておられる先生方へ

かつて性感染症は、花柳病ないし性病として特定な男女に流行した疾患として捉えられ、感染者は差別されていた時代もありました。しかし、今日ではHIVが世界的に蔓延し、性感染症はすべての男女が罹患する可能性のある疾患として、生活習慣病として捉えることが必要となっています。

わが国ではとかく性器に関することは隠蔽する傾向がありますが、産婦人科医や泌尿器科医に限らず、すべての医師が性感染症を認識し、性の健康を支援して頂きたいと思います。

また、昨今では十代の性行動が活発となり、特に性器クラミジア感染症の罹患率が高い頻度でみられます。しかも症状が軽微ないし無症状で経過していることが多く、自覚しない状態で感染源になっていることもあります。そこでセックスパートナーのいる患者には、性感染症の検査を受ける必要があることを積極的に進めて頂きたいと思います。それが性の健康に繋がることになります。先生の暖かいご支援を期待しております。

患者の性の健康に向き合う ~支援のポイント

1性感染症に対する知識の提供

どのような病気があるのか、潜伏期がどのくらいの期間か、どのような症状がでるのか、どのような検査が必要か、どのような治療ができるのかを、分かりやすく伝える必要があります。

2確実な診断と治療の徹底、途中で治療放棄させない

診断は、問診、触診、視診等により丁寧に行い、その診断をもとに検査を実施することで、患者のコンプライアンスを高めることが大切です。症状が軽減すると、どうしても服薬をやめてしまいがちですが、そうならないためにも、真摯な姿勢で患者と向き合う必要があります。

3パートナーの検査の必要性

性感染症を治療する上での基本ですが、患者は 「パートナーとの関係性が悪くなるから 『検査を受けて』 と言いづらい」 と思っていたり、あるいは不特定多数のパートナーがいる場合も少なくありません。お互いを思いやる気持ちを持ってもらうような関わりが必要です。

4治癒の確認

性感染症を減少させるためには、治療経過を丁寧にフォローし、感染源にならなくなったことを確認する責任があります。そのためには、患者自身が 「治癒したことを確認しなければならない」 という意識を持てるような関わりが必要です。

5性感染症の予防に関する指導

すでに、なんらかの症状があって治療を受けている患者に対して、再び性感染症にかからないように関わる必要があります。それまでの行動を単に否定するのではなく、どんな行動が自分の生活にとって大事なことなのかを共に考える姿勢が大切です。人は 「態度」 を変えることはできます。

6地域の性教育への支援

外来にパンフレットを置きませんか。 問い合わせ先は、各種ホームページのアドレスや、相談電話などを記載しておきましょう。

よくあるQ&A

Q1外来に14歳の少女が「月経が来ない」と受診してきました。
エコーをしたいのですが、内診台にのるのを拒否します。
どうしたらいいですか。

A1妊娠を疑っている場合、エコーで確認すれば簡単ですが、まず、問診をしっかりすることが大切です。妊娠する機会があったのか。性交経験があるのか、など丁寧に接するなかで、妊娠が考えられる場合は、尿検査から行い、内診の必要性が分かり、納得できたら診察も出来ると思います。患者との信頼関係作りが先決です。

Q2泌尿器科医です。男性で淋菌患者が来院しました。薬を処方したのですが、パートナーの女性の治療についてどうしたらいいですか。
女性は症状がないので、治療はしなくてよいといいます。

A2淋菌感染の場合、パートナーも同じ様に治療することが必要です。症状がないのであれば、まずは感染の有無を検査してみてください。検査結果がマイナスであれば、他のパートナーの存在も気になるところです。一緒に面接せず、別々に面接してみる必要もあります。淋菌の場合は薬の抗体ができ易いので、薬の処方は注意が必要です。

各種養成制度・開催講座・配布資料等のご案内

当財団では、診療に携わる医師の皆様に向けて、以下のような養成制度や講座を設けています。
その他詳しくは、事業案内 のコンテンツ内にてご覧ください。

性の健康と相談のためのガイドブック

性の健康に関する啓発活動に従事する保健医療従事者、学校保健関係者、必携!

性に関する考え方や性感染症、避妊、人工妊娠中絶などの基本的な知識を、事例やQ&Aを盛り込んでわかりやすく解説しています。
性の悩み相談に活かせる知識が満載。 「性の健康」を支援するすべての人が、幅広い視野をもち、相談者として自信をもって対応することができる実践書です。

編集 (公財)性の健康医学財団 / 編集代表 齋藤益子  2014年4月10日発行
B5判198ページ  定価 2,808円 (本体2,600円+税8%) ※会員特価あり
発行所 中央法規出版株式会社
詳しくはこちら

臨床医・研究医向け各種医療職向け
性の健康医学財団賞

性感染症および性の健康に関して、科学的研究の発展を図るために
性の健康医学財団の創立90周年を記念し、性感染症および性の健康に関して、その成因、病態、診断、治療、予防・啓発等の科学的研究の発展を図るために、性の健康、泌尿器科、産婦人科の三分野の研究を助成することとし、財団賞(副賞各30万円)を設け、毎年授与することといたしました。 (自薦・他薦は問いません)

日本性感染症学会 学術奨励賞 奨励金
日本性感染症学会員向け
日本性感染症学会 学術奨励賞 奨励金

若手研究者の育成と研究の助成のために
日本性感染症学会では、主として若手の研究者を対象に、学会誌の掲載された学術研究論文の中から、優秀な作品を選び出し、厳正な選考の結果、学術奨励賞を授与しています。副賞として30万円の奨励金が、公益財団法人性の健康医学財団より拠出されています。

医療職(臨床医)向け

臨床現場の医師を対象とし、性感染症をはじめとする感染症の検査・診断・治療とその予防方策について最新の知見等を提供する専門的な講習を目的としています。
日本性感染症学会認定研修5単位取得の講座です。 当日参加証明書を発行致します。

内容 「最新の診断と治療 -性感染症ガイドラインの主な変更点- 」 他
本年度(第8回) : 平成29年1月22日(日)詳しくはこちら

性の健康について、さらに詳しく知りたい方へ

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは ~予防啓発に役立つ情報

性感染症とは、「性的接触によって感染する病気」 と定義されます。 普通の性器の接触による性交だけではなくオーラルセックスやアナルセックスなど性的な接触で感染するすべてが含まれます。したがって特殊な状況での感染もありますが、通常の人としての営みの中で誰もが感染する病気であり、誰にでも生じる健康問題であるといえます。

以下コンテンツでは、代表的な性感染症について体系的に理解し、平成24年(2012年)1月の 「性感染症に関する特定感染症予防指針」 改正のポイントとされる、口腔を介した性的接触による咽頭感染に関する情報の提供等も含めています。
ぜひ日常業務の中で、地域住民の方々に対する性感染症の予防啓発にお役立ていただければ嬉しく思います。

性の健康について

性の健康について

「性の健康」とは、単に疾病がない状態を意味するに留まりません。性の喜びや満足は幸福にとって不可欠な要素です。

性の健康世界学会(World Association for Sexual Health :WAS)で採択された 「性の健康と性の権利宣言」 を紹介し、これらを踏まえながら、各機関の専門職の方々におさえていただきたい、具体的な支援のポイントをお伝えいたします。

性感染症とは
~予防啓発に役立つ情報 (もくじ)

1. 性感染症とは
● 感染症法の中で規定されているもの
● 特定予防指針で示されているもの
● 学会ガイドラインであげているもの

2. 主な性感染症一覧
● 梅毒
● 淋菌感染症
● 性器クラミジア感染症
● 性器ヘルペス
● 尖圭コンジローマ
● 腟トリコモナス症
● ケジラミ症
● 性器カンジダ症
● B型肝炎
● C型肝炎
● 後天性免疫不全症候群(エイズ)

3. 性感染症の現状
● 性感染症定点での報告数(2011年)
● 定点あたり報告数の年次推移(男性)
● 定点あたり報告数の年次推移(女性)

4. 性感染症の検査・治療
● 保健所に行く
● 病院・クリニックに行く
● 検査と診察の実際

5. 若者の性行動の実態と避妊
● 若者の性行動の実態
● 高校生の妊娠と避妊
● 避妊法